3月1日（土）～3月30日（日）

（3月20日公開予定）

震災で仕事を失い、何事にも無気力になっていた青年が飼い主を亡くした一匹の犬に‹多聞›に出会ったことで新たな生きがいを見つけて行くヒューマンドラマ。多聞が青年の元から姿を消し、行き着いた先は熊本県。宮城県から熊本県までは3000キロの道のり。そんな遠くまで一体何が犬を駆り立てたのか。多聞を追う青年も様々な問題を抱えている人たちに出会うことで、徐々に生きる希望を見いだしていく。原作は馳星周。第163回直木賞受賞作「少年と犬」がモチーフになっている。

　震災の爪痕を見つめていた青年、和正は一匹のシェパードに出会った。首輪には多聞と書かれた名札がつけられていた。多聞は震災で飼い主を失った震災犬だった。多聞は和正の家族にもすぐに懐き、かわいがられていた。だが、震災で職を失い、認知症の母を抱えている家庭の生活は苦しかった。

しかも和正は人に言えない秘密を抱えていた。生活費を稼ぐため被災地を荒らし回る窃盗団に入り、盗品を運ぶ車の運転手をしていたのだ。それを知った姉は激怒。手にしていた金を和正に投げつけた。家族の絆がほころび始めた矢先、多聞が姿を消した。和正は多聞がいつも‹南の方角›を気にしていたことを思い出し、探しに出掛けるのだった。

2年後、琵琶湖の畔で多聞に似た犬を見つけた。その犬は飼い主と思われる女性からレオと呼ばれていた。女性の名は美羽。性風俗店で働き、それを人に言えず1人悩んでいた。和正は美羽に多聞の事を話し、自分の秘密を打ち明けた。徐々に2人の距離が縮まり始めた時、再び多聞がいなくなった。2人はお互いの人生の新しい一歩を踏み出すため、多聞の行方を捜す旅に出ることを誓ったのだった。

一方、多聞は行く先々で様々な人生を生きてきた人々に出会っていく。そして5年後の2016年、多聞はある家族の元で幸せな生活を送っていた。そして突如、大きな揺れが襲った。熊本大地震だ。

再び地震に襲われた多聞、悲劇は繰り返すのか、それとも無事新しい家族と生涯を終えるのか。多聞と関わる人々が抱える悲喜こもごもの人間模様に見る者の心が引きつけられる。

上映時間2時間9分

TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、109シネマズ

HAT神戸他で上映予定

編集後記

130号をお届けします。クローズアップで、関西電力病院 滝吉郎院長からお話をお聞きしました。4月には、『EXPO2025』が始まります。教育対談、エッセイ、美術館、映画など情報を載せています。お楽しみください。創刊して25年になります。皆様ご愛読くださり感謝しております。このたびホームぺージをリニューアルして、WEB ブックを立ち上げます。詳しくは、次のページをご覧ください。

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