脳卒中

日本人の死亡原因第3位・脳卒中

 

平成30年8月に厚生労働省が発表した「人口動態月報年計(概数):平成29年」によると脳卒中(脳血管疾患)が日本人の死亡原因の第3位となりました。1位は悪性新生物(がん)約37万人、2位は心疾患約20万人、脳卒中では約11万人の方が亡くなっています(いずれも年間)。

突然襲ってくる脳卒中はとくに寒い季節の発症が多いとされますが、死亡原因とともに重視しなければならないのは認知症とともに要介護につながるケースが多いことです。

■介護につながる疾患

現在、国内における脳卒中の患者数は推定で男性約60万人、女性約59万人とされています(厚生労働省「平成26年患者調査の概況」)。継続的な治療を受けている総患者数はやや減少傾向にありますが、それでも高齢者にとってはもっとも用心すべき疾患であることに違いはありません。

脳卒中は平均入院期間が長く、患者の3割以上が寝たきりになるというデータ(厚生労働省「国民生活基礎調査」平成25年)もあり、これは認知症に次ぐものです。

脳卒中の後遺症で障害が残れば長期にわたるリハビリや介護が必要となり、それはご本人だけでなく家族の生活、さらには医療費でも大きな負担を強いることになります。

そこで重要となるのは脳卒中が疑われる症状をご本人が自覚したり、周囲の人が気づいたりした時にはためらうことなく病院を訪れて受診するという判断です。

 

 ■どんな予兆がある?

脳卒中は発症の仕組みによって脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血に分かれます。このタイプ別では脳梗塞が一番多く、次いで脳内出血、くま膜下出血と続きますが、最近注目されているのは脳梗塞の中でも心原性脳塞栓症を引き起こす不整脈の一種である心房細動です、これは高齢者に多く見られ、心臓や大動脈で生じた血栓が脳に流れて血管を詰まらせることで起きます。太い血管が詰まるので重症化しやすいものとされています。

脳卒中の典型的な症状としては、

1.  これまで経験したことのないような激しい頭痛 

2.  片側だけの顔面マヒ、手足のしびれや脱力 

3.  片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠損する 

4.  ろれつが回らない(言語不明瞭)、他人の話が理解できない、などがあります(ただし、くま膜下出血では激しい頭痛や意識混濁があっても手足などのマヒはないとされています)。

 

 ■受診する時の診療科は?

 脳梗塞を含めた脳卒中の症状はある日、突然に発症することが少なくありません。前記のような予兆があれば以上のような症状をご本人が自覚あるいは家族など周囲の人が確認した時は速やかに受診することをお勧めします。

脳卒中は多くの場合、高血圧や糖尿病などの全身病、心臓や腎臓など大切な臓器の内蔵の病気も伴っており、1人の脳卒中患者の場合、複数の病気をもっている可能性があります。当然、治療する診療科も複数必要な場合が多くなりますが、受診する時の診療科は脳血管内科・外科、脳神経内科、脳神経外科などがひとつの目安となるでしょう。最近は専門に特化した脳卒中診療部、脳卒中センターを掲げる病院も増えています。

 

 ■予防や再発防止に必要なこと

脳卒中の治療は手術や薬剤投与が中心となります。脳梗塞の場合、発症後4時間半以内であれば血栓を溶かすt-PA(アルテプラーゼ)の静脈内投与、8時間以内では血管内にカテーテルを挿入して血栓を取り除く治療が有効とされています。

同時に心がけたいのは予防や再発防止です。

脳卒中は再発することが多いとされており、予防で一番重要なのは脳卒中発症の最大の危険因子とされる高血圧や糖尿病対策です。高血圧は血管の壁に強い圧力がかかるので血管が破裂しやすくなり、それを誘発するのが糖尿病なので甘いものなどの間食の過多、夜遅い時間の食事、脂っこいものなどはできるだけ控え、生活習慣を見直したいものです。

また、高血圧や糖尿病を抱えている方は日常的な自己管理が欠かせません。可能な限り日頃からの血圧測定、血糖値などのデータを確認できる血液検査をお奨めします。