旭化成の吉野彰氏にノーベル化学賞
リチウムイオン電池の開発に貢献
スウェーデンの王立科学アカデミーは10月9日、今年のノーベル化学賞を旭化成の吉野彰・名誉フェローら3人に贈ることを発表しました。小さくて軽く、繰り返し充電して使えるリチウムイオン電池の開発が評価されました。リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコンといったモバイル機器に不可欠であるほか、近年は電気自動車や宇宙開発などにも広く活用されています。共同受賞者はテキサス大学のジョン・グッドイナフ氏とニューヨーク州立大学のスタンリー・ウィッティンガム氏。授賞式は12月10日、スウェーデンの首都、ストックホルムで行われます。
◆スマートフォンから電気自動車まで
吉野氏は大阪府吹田市の出身で、京都大学工学部を卒業。1972年に大学院工学研究科の修士課程を修了後、旭化成に入社しました。技術者として小型充電池の開発に取り組み、マイナス極の材料として特殊な炭素繊維が利用できることに着目。85年には現在のリチウムイオン電池の原型となる新型デバイスを完成させました。これに先立つ70年代、ウィッティンガム氏は世界で初めてリチウムを使った電池を発明。グッドイナフ氏はプラス極にコバルト酸リチウムを使うことを考案しましたが、実用化には至っていませんでした。
その後、小型で高出力のリチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラといった持ち運びできる電子機器の普及に大きく貢献し、IT革命の原動力となりました。近年では電気自動車や宇宙ステーションなどにも活用され、現代社会を支える技術のひとつになっています。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを有効利用するためにも役立つといい、今後も用途が広がりそうです。
スウェーデン王立科学アカデミーは授賞理由で吉野氏らの貢献を「私たちの生活に革命を起こした」と高く評価しました。日本人のノーベル賞は、昨年の医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑博士に続いて2年連続。化学賞では8人目となります。日本の科学技術の素晴らしさを改めて認識させる快挙だと言えるでしょう。