透析治療を悲観することはありません。
人生の新しい出発点と考えて欲しい。
「佐々木クリニック」 院長 佐々木 公一先生
なぜ、腎臓内科の専門医を目指したのか
――腎臓内科を専門とした医療機関、とくに人工透析内科を診療科目に掲げるところはそう多くないと思いますが。
「腎疾患を患う人は年々増加傾向にあるんですが、この地域(鶴見区)には腎臓内科を専門とする医療機関がなく、腎疾患を患っている人や腎臓に不安がある人は遠くの総合病院まで行かなければなりませんでした。そこで腎臓病の専門医だった父親(榮喜氏)が腎臓内科・透析治療に特化したクリニックとして1991年に開院したのがそもそもの出発点です」
――先生はなぜ腎臓内科医の道を選ばれたんですか?
「父親の後を継ぐという意味では必然だったと思うんですが、実は研修医時代に内科と外科、どちらに進むか迷ったことがあるんです。その時に指導員から、内科なら勉強すればするほど医師としてのレベルを高めることができると言われ、それで腎臓内科医を選ぼうと決心しました。もちろん医療人として歩むことは容易ではありませんが後悔はしていません。仕事を通じて患者さんには健康で長生きしていただきたい、それを手助けすることが理想の医療であると思っています」
自覚症状が乏しい腎疾患は
糖尿病由来がほとんど
――腎臓病の専門クリニックなので受診する人は限られていると思いますが。
「来院される方には大きく分けて二つのパターンがありますね。ひとつはネットで腎疾患についての情報を検索しているうち、自分自身に思い当たることがあるので受診してみようと言う人たち。もうひとつは健康診断で腎機能の低下を示すクレアチニンや尿素窒素などの数値が高かった場合です。ただ、異常がわかったとしてもいきなり大きな病院へ行くのは待ち時間の問題や敷居が高い感じがあってやや抵抗がある。そこで当クリニックのような身近な医療機関を受診してみよう、ということになるんだと思います」
腎疾患は自覚症状が乏しい
――腎臓病の専門クリニックなので受診する人は限られていると思いますが。
「来院される方には大きく分けて二つのパターンがあります。ひとつはネットでむくみや倦怠感等の症状を検索しているうちに腎疾患を疑って受診される方、もうひとつは健康診断で検尿異常や腎機能の低下を示すクレアチニンや尿素窒素などの数値が高かった場合です。ただ、異常がわかったとしてもいきなり大きな病院へ行くのは待ち時間の問題や敷居が高い感じがあってやや抵抗がある。そこで当クリニックのような身近な医療機関を受診してみよう、ということになるのだと思います」
――病態としての腎疾患に特徴的なものはありますか。
「特殊な腎炎以外では、高度に腎機能が低下しない限り、腎疾患には痛みや不快感などの自覚症状をほとんど認めません。ですから検査値で異常があっても体調が急変するわけではありません。そのまま放置してしまう方が多いのが問題点だと思います。」
――どのような時に腎臓内科専門医を受診すればよいのですか
「先ほど申し上げたように腎疾患は高度に腎機能が低下しない限りは症状が出現しにくいので、採血検査で腎機能のデータ(クレアチニンや尿素窒素等)に異常が認められたり、尿検査で異常が確認された場合は、症状がないからといって放置するのではなく、腎臓内科専門医を受診していただきたいですね」
――透析が必要になるのはどういう時ですか。
「腎臓の働きが極端に低下すると血液のろ過が充分に行えず、水分や老廃物のコントロールができなくなってしまいます。そのような場合に人工的に腎臓の機能を代替して血液の浄化を行うのが透析療法です」
患者本位の姿勢を貫くために
さまざまな透析法を導入
――人工透析は血液透析が一般的ですが、在宅透析や腹膜透析はどんな治療ですか。
「在宅透析は1人に対して1台の透析機器をご自宅に設置して血液透析を行うのですが、患者さんによる自己穿刺が条件とされ、これが代行できるのは医師等の有資格者と定められています。穿刺ができないと透析もできませんから患者さん側のハードルが高いです。
腹膜透析も同じく在宅での透析です。これは患者さんの腹腔内(お腹の中)に透析液を一定時間貯留し、その間に血液中の尿毒素や塩分、水分が腹膜を介して透析液に移動するもので、就寝中に機械を使って透析液の交換をする方法や1日に数回透析液を交換する方法等があります。ただ、多くの処置を患者さん自身が行うので、これをサポートする家族の存在が欠かせず、すべての人に向いているというわけではありません。結局、ほとんどの人は血液透析を選ばれます。」
――佐々木クリニックでの取り組みをご紹介ください。
「患者さんの生活リズムは仕事、家庭生活によりさまざまです。病態に合わせてではありますが、一般的な週3回×4時間にこだわらず週2回透析、より多くの老廃物を取り除くことができるオンラインHDF、オーバーナイト透析による長時間透析を積極的に取り入れています」
――オーバーナイト透析とはどういうものですか?
「患者さんが帰宅し、夕食や家族との団欒を楽しまれたあと、夜間から翌朝にかけて透析するもので、2017年から始めました。寝ている間に透析を行うので身体への負担も少なくてすみ、治療後は翌朝からいつも通り仕事や家事をすることが可能です。透析中は私を始め看護スタッフが当直体制で待機しますが、対応がハードなこともあって大阪府下では4医院しか導入していません。」
――腎移植を受けない限り透析は一生続けることになるのですか?
「その通りです。患者さんご本人やご家族など介護者の方の日常生活に深くかかわるのが透析治療であり、それだけに心理的な負担も大きいのですが、私は常々患者さんに『治療は確かに大変ですが、悲観せず、新しい人生の出発点として前向きに捉えましょう。私も専門医として全力で支えます』とお伝えしています。
当クリニックが目指すのはこの考えを具体化することです。それは私や家族が患者になった時に通院したいと思う医院像でもあります」
[佐々木公一先生 略歴]
2006年 福岡大学医学部卒業
同年 大阪大学医学部附属病院研修医
2007年 NTT西日本病院研修医
2008年 りんくう総合医療センター腎臓内科医員
2012年 大阪厚生年金病院(現・JCHO大阪病院) 腎臓内科医長
2015年 佐々木クリニック副院長
2016年 同院長
日本腎臓学会認定専門医
日本透析医学会認定専門医
日本内科学会認定総合内科専門医