国立民族学博物館の展望
その存在意義、活用意義
国立民族学博物館(みんぱく)は、わが国における文化人類学とその関連分野の国際研究拠点です。世界最大級の博物館機能と、大学院教育の機能を備えた、文化人類学・民族学の研究所として、世界で唯一の存在です。
1974年に創設され、1977年11月17日に大阪万博跡地に開館しました。開館以来、文化人類学・民族学に関する調査・研究をおこないながら、その成果を展示に反映してきました。この40年間で所蔵する標本資料は34万点を超え、世界最大級の民族学博物館となりました。
みんぱくの本館展示は、2008年度から開始した展示の全面改修が2017年3月に完了し、まったく新しい形に生まれ変わりました。新しくなった本館展示では、民族衣装などの生活用具を約1万2000点展示し、儀礼や芸能を紹介する映像を公開しています。
展示資料の多くは研究者が世界各地で実際に使用されていたものを現地で収集してきたものであり、そのひとつひとつに制作者や使用者、研究者の歴史や想いが凝縮されています。
本館展示は、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、南アジア、東南アジア、中央・北アジア、東アジアに大きく分けた地域展示と、音楽・言語などの通文化展示があり、ビデオテークでは、世界の人びとの生活や技術などを記録したビデオ番組を見ることができます。また本館の常設の展示とは別に、年に数回、テーマを定めて「常設展」、「企画展」も開催しています。
みんぱくは、いつ行っても、あらたなものに出会うことのできる場です。
いいかえれば、そこで人とモノ、人と人が出会うことで発見があり、そこからあらたな探究や挑戦が生まれていく、という「フォーラムとしてのミュージアム」の実現を目指しています。『みんぱく』をもっと活用してみてはいかがでしょうか。
館長からのご挨拶
国立民族学博物館長 𠮷田憲司
人類の文明は、今、数百年来の大きな転換点を迎えているように思います。これまでの、中心とされてきた側が周縁と規定されてきた側を一方的にまなざし、支配するという力関係が変質し、従来、
それぞれ中心、周縁とされてきた人間集団の間に、創造的なものも破壊的なものも含めて、双方向的な接触と交流・交錯が至る所で起こるようになってきています。それだけに、異なる文化を尊重しつつ、言語や文化の違いを超えてともに生きる世界の構築をめざす文化人類学の知が、これまでになく求められているように思われます。
みんぱくでは、こうした世界の変化を受けて、10年の年月を費やし、本館における世界諸地域の文化に関する常設展示の全面的な改修を進めてまいりました。その作業は、平成29年3月で一応の完了をみましたが、同年4月からは、研究部の体制も全面的に改め、時代の要請に応じた新たな組織で研究活動を推進することにいたしました。研究部は、「人類基礎理論研究部」「超域フィールド科学研究部」「人類文明誌研究部」「グローバル現象研究部」、そして「学術資源研究開発センター」から構成されます。いずれも、国内外の大学や研究機関、さらには研究や資料収集の直接の対象となった社会の人びと、すなわちソース・コミュニティの人びとと連携し、国際的なネットワークを通じた協働のもとで研究活動を展開していくことになります。
全面改修を終えた本館展示についても、すでに次の段階に向けた作業を進めています。次世代型電子ガイドと新世代ビデオテークとの連動、さらにはウェブ上に展開する「みんぱくバーチャルミュージアム」との連携により、みんぱくにこれまでに蓄積され、今も蓄積されている研究情報を、展示を糸口にして、利用者、研究者の皆さまそれぞれの関心に応じて自由に引き出せ、さらなる探究につなげていくシステムを次年度に導入すべく、開発を進めています。
また、現在みんぱくでは、「フォーラム型情報ミュージアム」というプロジェクトを推進しています。このプロジェクトは、みんぱくの所蔵する標本資料や写真・動画などの映像音響資料の情報を、国内外の研究者や利用者ばかりでなく、それらの資料をもともと製作した地域の人びと、あるいはそれが写真なら、その写真が撮影された現地の人びとと共有し、そこから得られた知見を共にデータベースに加えて共有し、新しい共同研究や、共同の展示、コミュニティ活動の実現につなげていこうというものです。
これらの活動は、いずれも、かねてよりみんぱくがめざしてまいりました、さまざまな人びとの知的交流と発見、協働の場、つまり知のフォーラムを、研究教育活動・博物館活動を問わず、これまで以上に充実したかたちで実現しようとするものです。
皆さまの、ご協力、ご支援を、心からお願い申し上げます。
国立民族学博物館
〒565-8511
大阪府吹田市千里万博公園10-1
TEL:06-6876-2151(代表)
【開館時間】
10:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】
毎週水曜日
※水曜日が祝日の場合は翌日が休館日
【入館料】
一般420円、高校・大学生250円、中学生以下無料
※自然文化園は無料で通行できます。