〝うきは市〟のフルーツと健康効果について
福岡県うきは市長 髙木典雄
うきは市は、九州一の大河「筑後川」と「耳納連山」に囲まれ、大分県との県境に位置する福岡県うきは市は、福岡都市圏から車で1時間も満たない近距離にありながら、水と緑に恵まれ、風光明媚な自然環境、田園風景を今なお保っている、人口3万人のまちです。
中山間、山麓部には棚田や果樹園、平坦部には古い町並みや米、麦、植木等のほ場が広がっている他、古墳や神社、仏閣など歴史・文化遺産の多い地域でもあり、まさに日本の原風景がここにあるといっても過言ではありません。
うきは市のフルーツ
うきは市は海こそありませんが、平坦地、山麓部、中山間地、扇状地が広がる、大変起伏に富んだ地形を有しています。かねてから、このような地形を活かして、農作物の適地適作が行われてきました。そして現在では、農業に従事される皆さんの、弛まぬ努力により、農業は基幹産業のひとつとなっております。特に、うきは市では、いちごにはじまり、桃やブルーベリー、ぶどう、梨、柿、イチジク、キウイ…といった四季折々のフルーツが一年中収穫できます。また、ぶどうは47種類、桃は37種類、梨は11種類、柿は16種類など、それぞれの品種も多く「フルーツ王国」としてPRに力を入れているところです。
フルーツの健康効果
四季を通じて、さまざまなフルーツが採れるフルーツ王国うきは市。中でも柿は、市の代表的なフルーツで、西日本有数の産地でもあります。 ここで、食、特にフルーツを活用した健康づくりについて紹介をさせていただきます。
昔から「柿が赤くなると医者が青くなる」という諺があるくらい、柿は体に良い果物です。
柿は、血液をサラサラにするといわれるポリフェノールの一種であるタンニンを多く含み、その量は赤ワインの10倍にもなるということは、よく知られているところですが、この度、福岡市にあります中村学園大学と包括連携協定を結ばせていただき、その取り組みの一環として、うきは産の柿を活用したメタボに効く食事メニューの開発を進めています。柿には、タンニンだけでなく、プロビタミンAのβカロテンやβクリプトキサンチンのカロテノイドが豊富に含まれており、メタボリックシンドロームの緩和など様々な機能性成分を有している事が判明しました。そこで、柿そのものを食べる事(食材機能性)だけではなく、柿を使った飽きないメニュー(食事機能性)に着目して、柿を旬の時期だけでなく、通年で柿を食べる事ができるように一汁三菜メニューを開発し、その結果、柿を使ったメニューが、内臓脂肪を効率的・効果的に減少させることが、実証実験で見て取れました。そのことから現在、学校給食、病院給食、社員食堂等を通じて提供を開始し、地域における効果検証を行っているところです。今後も中村学園大学と連携して、他のフルーツについても成分分析を行い、健康づくりにつなげていきたいと考えているところです。
うきはテロワール
このように、うきは市は、フルーツをはじめ豊富な農作物が生産されていますが、何故農業生産に適しているのか、地方創生の取り組みの一環として、うきは市の地勢、地層、地質、気候、風土などの地理的特性に関わる学術的調査を行いました。今までは、非常に定質的というか、「うきは市は水と緑のまちです。非常に気候も温暖で肥大な土地で、おいしいフルーツが採れます。」という、うきは市について情緒的な説明を行ってきました。しかし、農業も国際展開する中で、このような説明では、なかなか消費者の皆様の納得が得られないのではないか、もっと定量的に、データ的、科学的、数値的に、こういう数字が出るからうきは市の農作物はこれだけ素晴らしいのだと立証できるようにチャレンジをしました。
結果として、想定以上のデータを得ることができました。数多くの項目において、国内の他の農業生産地よりも良いデータが出ていますが、大きな要点として、雨、気候、風、地形、地理、土壌、水の7つを自然要素にまとめ「うきはテロワール」として啓蒙・普及を図っているところです。
土地のことをフランス語でテールといい、テールから派生した言葉で、テロワールがあります。つまりフランスでは、地理的条件をブランド化につなげていく言葉として使用しているところです。調査結果では、うきは市の土地が、フランスのボルドーやアルザス地方と非常に似ているということが示され、それを受けて「うきはテロワール」と名付けた新しい発想のもとで、うきはブランドの構築を図っているところです。
うきは市が有している地理的条件の一つとして、複合扇状地があります。隣の久留米市からうきは市まで23kmに及ぶ耳納連山が連なっていますが、この山筋にいくつもの渓流が流れて、扇状地を形成しています。この扇状地は川と川の間隔が短く、重なり合っており複合扇状地という珍しい地形になっています。これは400万年以上かけて作り上げた複合扇状地で、非常に複雑な地層、地質になって、結果としてフルーツを生産するのに適した水はけの良さと保有力を有していることが分かりました。国内には、これだけの複合扇状地は他にないとのことです。
健康づくりについて
ところで、うきは市の平成29年4月での、65歳以上の高齢化率が32.3%となっています。同時期の我国の高齢化率は26.7%で5.6ポイント先行しており、政府の長期予想に従えば、うきは市は全国平均よりも15年先を行っているといえます。こうした状況の中で、高齢者がいつまでも社会参画、労働参画できるような、生涯現役のまちづくりというのがますます重要になってきています。うきは市では重点施策の一つとして、すべての市民が、健康でいきいきと幸せを感じられるようなまちづくりを挙げています。
そのためには健康づくりがなにより重要であります。現在うきは市では、健康づくりのポイントとして、①食 ②運動 ③休養 ④生きがい ⑤きずな ⑥特定健診 の6点を掲げて様々な取り組みを実施しているところです。
まとめ
これまで、うきは市のフルーツと健康を通した取り組みについて述べてまいりました。今後のまちづくりを進めるにあたっては、これまで気づかなかった「うきは」の素晴らしさを実感し、新しい価値観を持って、日々の生活を送ることができる社会を形成することが重要だと考えます。
かつての日本の原風景が残る、うきは市の新しい価値観は、うきは市の日常の中に存在していると思います。弥生、古墳時代から農村社会が形成され、良質な土壌や地勢・気候に育まれ、人々が生活し、そして現在に至ったうきは市は、ほかの地域にはない優位性を持った地域であるといえます。知恵と工夫を凝らして、これからも、ほかの地域とは一味もふた味も違う存在感のある、〝うきはブランド〟を構築してまいりたいと考えています。
皆さん、このようなうきは市に是非お越しいただき、全身でうきはの魅力を感じ、リフレッシュしていただければ幸いです。皆さんのお越しをお待ちしています。
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