スピード感のある教育改革で、
次代の社会・医療を担うリーダーを育成。
学校法人 大阪医科薬科大学
高槻中学校・高槻高等学校
岩井 一 校長
学校法人大阪医科薬科大学の中等学園として、大学や研究機関との密接な連携を進め、新たな規模の拡大を図る、「高槻中学校・高槻高等学校」。医療現場で求められる優秀な次世代リーダーを育成する教育の場として注目が高まっています。岩井 一校長に、掲げておられる理想の教育と、それを実現可能にする先進の学習環境などについて伺いました。
“最優”の「男女共学」進学校として、
優秀な社会人・医療人の育成が使命
―――創立77年目の今年4月から、女子生徒(中1)の受け入れを開始されましたね。
岩井 はい。本校は昨年まで男子校でしたが、医療業界や社会が望んでいる優秀な人材をもっと幅広く育てたいと考え、「男女共学」に踏み切りました。本校のある北摂地域には、以前から理系を目指す女子生徒が多かったことも理由の一つでした。現在、大阪医科大学の医学部の学生の男女比率は7対3ですが、大阪医科大学を含めて医学部進学を目指す女子生徒に、広く本校の門戸を開放して潜在的なニーズをすくい上げ、将来を担う人材のレベルアップを図っていきたいと考えています。ソフト面ハード面ともに、準備はかなり前から進めていました。ハード面では建て替えが必要な校舎を含め、2020年までに全ての施設・設備を完備する予定です。理科の7つの実験室やそこに連結した大きな図書館(アクティブラーニングコモンズ)などを備え、理系を中心として探求心旺盛な生徒を受け入れるにふさわしい環境を整えます。このように男女が切磋琢磨し、互いに高め合える新時代の教育にふさわしい学びの森として、“最優”の中学校・高等学校を目指していきます。
―――どのような「中高一貫教育」を目指しておられるのですか?
岩井 本校のスクールミッションは「世界を舞台に活躍できる、次世代リーダーの育成」です。グローバル人材の育成と、知性と学力のさらなる高い調和―――そのためにはまず、語学教育において、中学初年度から相当に力を入れなくてはなりません。具体的には、4技能「読む・聞く・書く・話す」のすべてを磨くために、中1と中2では通常の英語授業を週5時間、それに加えてベルリッツ・ジャパン社による週3時間の英会話授業を行っています。またこの英会話は中3ではフィリピンとのオンラインによるマンツーマンの週2時間の英会話と、やはりオンラインによる週1時間の英語多読にレベルアップさせます。常に負荷をかけながら挑戦することで高い英語力が身につけられる環境を整えています。
また本校ではベンチマークとして、「中学卒業までに英語検定2級に130名合格」「難関国立10大学に130名合格」「国公立医学部+大阪医科大に40名合格」という具体的な到達目標を掲げています。この達成に向けて着実な取り組みを行っている現状です。その他にも、全教科において対話的な授業を行い、話し合いや発表なども多く取り入れて、自分たちの意見や考え方を主体的に発信していくトレーニングをしています。多様な考え方を認め合いながら、協働的に学んでいく姿勢はこれからの時代に不可欠なものであり、これからも一層真剣に取り組んでいきたいと考えています。
大阪医科大・大阪薬科大や、
国内外の有名大学と連携
―――どのくらいの生徒が医学部を志望するのですか?
岩井 毎年、1学年(約260名)中、約40~60名が医学部医学科に進学していますから、多い方ではないでしょうか。3コースに分かれて難関大学の医学部、理系学部、文系学部を目指しますが、入学時は全員が同じコースに所属。中3から希望進路に合わせて、英語教育を核にグローバル人材を育成する「GLコース」、高度な理数教育で生命科学分野のリーダーを育成する「GSコース」、文理混合型教育で国際的に活躍できるリーダーを育成する「GAコース」を選択します。
―――文部科学省からSSH※、SGH※の指定を受けていますが、具体的にどのような取り組みを行っていますか?
岩井 多様な課題研究や研修を、国内外のさまざまな大学などと実施しています。「GSコース」では、大阪医科大学・大阪薬科大学や、最先端の研究を行っている他大学・企業と連携し、サイエンスキャンプやロボット競技会など各種の科学技術コンテストへの参加、地質調査の実施、各課題研究の成果の発表、校内に一流の研究者の方をお招きするSSセミナーなど、多様な学びの機会を設けて様々な体験をさせながら、「サイエンス」に取り組む姿勢や態度を育み、学びに対する主体性を高めています。「GAコース」では、社会問題として顕在化しつつあるグローバルヘルスに関する諸問題の研究を通じて、地球規模の課題に対する関心と教養を深めることに主眼を置いています。海外から日本に来ておられる研究者の方をお招きするグローバルセミナーや、二度にわたる海外研修旅行。またこのコースを中心として高1・高2の全コースの希望生徒を対象にアメリカのスタンフォード大学による5ヶ月間にわたるオンライン講座を開講しており、中高生ではありながらも、世界基準の学びに触れるチャンスがあるのも特徴です。
※SSH(スーパーサイエンスハイスクール)、SGH(スーパーグローバルハイスクール)
【高槻中学校・高等学校】
昭和15年創立。昭和23年に学制改革により高槻中学校、高槻高等学校となる。平成16年完全中高一貫校化。平成22年4月岩井 一教頭が校長に就任。平成26年大阪医科大学と高槻高等学校が法人合併し、法人名は「学校法人大阪医科大学」に。平成28年大阪医科大学と大阪薬科大学が法人合併し、法人名は「大阪医科薬科大学」に。
希望者には、在学中から
基礎医学講座の受講も可能。
医療人を目指す生徒をバックアップ
―――医師を目指す生徒へのバックアップ対策として、在学中から大阪医科大学の講義を受けられるというのは本当ですか?
岩井 はい。中3の夏期には縫合・採血・聴診など、大学でしかできないメディカルサイエンストレーニングを開講していただいています。また、高1・高2の希望者を対象に、基礎医学講座を開講していただいています。生化学・衛生学・微生物学・生理学・薬理学・法医学・解剖学・病理学などの90分講義を8回行います。今年度は約50名の生徒が受講しており、将来、医学の分野に進もうとする生徒たちが熱心に受講しています。こうした学びに加え、高大連携プログラムの開発や、理科教員用のICTを活用した高大接続ワークショップの実施、グローバル教育、独自の英語教育等に他校に先駆けて取り組んでいます。また、アクティブラーニングの推進にも積極的に取り組んでおり、2020年の大学入試改革や時代の変化を見据えて基礎学力の伸長、教育内容の高度化を図っています。客観的に見ても、本校は「最優の中高一貫校」を目標に、ハイレベルな取り組みを行っていると自負しています。中学・高校の学習内容の枠にとどまらず、視野を広げる多様な教育内容によって、社会や医療分野の未来を担うリーダーを確かに育成していきます。
―――ありがとうございました。
岩井 一 校長の経歴
昭和49年 関西大学大学院工学研究科修士課程修了。同年高槻中学校・高等学校に奉職。平成12年教務部長代理・教務部長・教頭を経て、平成22年校長に就任。
教職歴43年、「学校を変えれば生徒は変わる。最優の進学校を目指し、現在進行形」をモットーに学校改革に取り組んでいる。